この記事でわかること
- コーヒーのチャフ(シルバースキン)とは何か
- チャフが渋み・雑味の原因になるメカニズム
- 焙煎度・精製方法によるチャフ量の違い
- 家庭でできるチャフの除去方法3選
- ゲイシャで実感したチャフ除去の効果

「ドリップしたコーヒーのキュッとなるような渋みや収斂感(しゅうれんかん)が気になる」ことはありませんか?
私の場合は、パナマゲイシャのような浅煎りスペシャルティをハンドミルで挽いて淹れたときの渋みが気になっていました。豆や焙煎が一流で、抽出にも気を配っているのに、なぜか舌に残る違和感。調べて試していくうちに、その原因のひとつが「チャフ」と呼ばれるコーヒー豆の薄皮と判明。チャフを除去してからは、同じ豆なのに驚くほどクリーンで透き通った味わいに変わりました。
この記事では、コーヒーのチャフとは何か、なぜ渋みの原因になるのか、そして簡単にできる除去方法(ブロアーを使った除去など)を実体験を交えて解説します。
なお、お店で挽かれたコーヒー粉はチャフが除去されていることがほとんどですので、コーヒーを早く消費する方はコーヒー粉を購入する方法もあります。一杯のクリアさをもう一段引き上げたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
【チャフとは】コーヒーの「薄皮」シルバースキンについて
コーヒー豆の構造とシルバースキンの位置

チャフを理解するには、まずコーヒー豆の構造を知る必要があります。
コーヒーの実(チェリー)は、外側からいくつもの層で構成されています。
- 外皮(果皮)
- 果肉(ミューシレージ)
- パーチメント(内果皮)
- シルバースキン(銀皮)← これがチャフ
- 種子(コーヒーの生豆)
シルバースキンとは、種子(コーヒー豆)の表面を覆う薄い種皮のことです。銀色の外観から「銀皮(ぎんぴ)」とも呼ばれます。そして、このシルバースキンが焙煎中に豆の膨張で剥がれてひらひらと舞い散る状態になったものが「チャフ」です。つまり、シルバースキンとチャフは同じものを指しますが、状態によって呼び分けられています。
焙煎時に剥がれるが完全には取れない理由
焙煎中に豆が膨張すると、シルバースキンの大部分は剥がれ落ちます。深煎りであるほど豆の膨張が大きく、チャフはほぼ焼失します。一方、浅煎り〜中煎りでは焼き切れずに豆の表面に残りやすいのが特徴です。
センターカットに残るシルバースキン
コーヒー豆の中央には「センターカット」と呼ばれる溝があります。この溝の奥にはシルバースキンが入り込んでおり、焙煎でも完全に除去することはできません。そのため、豆を挽いた後の粉にも微量のシルバースキン(チャフ)が混在することになります。これが味に影響を与える原因のひとつです。
【渋みの原因】チャフが味に与える影響
チャフがコーヒーの味にどのような影響を与えるのか、参考となる動画があります。
2016年ワールドブリューワーズカップ優勝(アジア人初)の粕谷哲さんのYouTube動画です。この動画では、チャフだけを取り出してドリップしており、かなりマニアックな検証をされています。結論として「チャフでドリップしたコーヒーはまずい」とされています。
シルバースキンの成分(食物繊維とポリフェノール)
学術研究によれば、コーヒーシルバースキン(チャフ)の主成分は食物繊維で、乾燥重量の50〜60%程度を占めることが報告されています(Borrelli et al., 2004, Journal of Agricultural and Food Chemistry)。セルロース・ヘミセルロース・リグニンといった植物繊維が中心です。
加えて、焙煎された豆と同様に以下の成分も含まれます。
- クロロゲン酸類(ポリフェノールの一種):乾燥重量で1〜2%程度(Bresciani et al., 2014, Food Research International)
- メラノイジン:焙煎過程のメイラード反応で生成。褐色成分で、渋み・苦味に寄与する
- カフェイン:微量(乾燥重量の1%前後)
チャフが渋み・雑味に寄与するメカニズム
一般的にコーヒーの渋みは、豆本体に含まれるクロロゲン酸類の熱分解物(ジカフェオイルキナ酸等)や過抽出によるものとされています。この中で、シルバースキン(チャフ)が混入することで雑味が増しやすい理由は主に以下と考えられています。
- 焙煎で炭化した繊維質の木質感:シルバースキンは豆本体より薄く軽いため、焙煎の熱で炭化しやすく、木のような香味・渋みを生みやすい
- 微粉化による過抽出:挽いた際にチャフは脆く砕けて微粉となり、表面積が増えて抽出過多になりやすい
- 微粉との絡みで口当たりが悪化:物理的な微粒子として舌に残り、ザラつきや収斂感を強める
つまり、チャフそのものが強烈な渋み成分を大量に含むわけではなく、「微粉化しやすく過抽出を誘発する」「炭化しやすく雑味を足す」ことが渋みや雑味につながるものと考えられます。
なお、コーヒーの渋みはお茶やワインと同じく、ポリフェノールが舌のタンパク質と結びついて生まれる感覚だそうです。仕組みは共通ですが、コーヒーの場合はクロロゲン酸類の熱分解物が主な渋み成分という違いがあります。
影響は限定的という見解もある
調べてみると、チャフの味への影響については複数の見解があったので紹介です。
- 影響あり派:シルバースキンが残ったコーヒーは雑味が多くなる。除去するとクリアで明るい味わいになる
- 影響限定的派:チャフの量は極めて少なく、ペーパーフィルター等で大部分が捕捉されるため、カップへの影響は微小
- スペシャルティ派:シルバースキンを含めた状態が「完成形」であり、除去すると味が平坦になることもある
個人的には、浅煎り〜中煎りでチャフが気になる場合は除去してみる価値があると感じています。特にゲイシャのような繊細なフレーバーを持つ豆では、チャフを取り除くことでクリアさが際立ちます。
【焙煎度と精製方法】どんな豆にチャフが多く残るのか
チャフの量は、焙煎度と精製方法の2つの要因で決まります。
個人的に体感として大きいのは、圧倒的に焙煎度の方です。
焙煎度の影響(こちらが主な要因)
| 焙煎度 | チャフの残り方 |
| 浅煎り〜中煎り | 多く残る。熱による焼失が少なく、薄皮が豆に付着したまま |
| 中深煎り〜深煎り | 少ない。焙煎の熱でほぼ焼失する |
ゲイシャやエチオピアのナチュラルのように、繊細な香りと酸味を楽しむ浅煎りスペシャルティはチャフが残りやすい傾向にあります。浅煎りで爽やかな酸味やフルーティーさを味わう豆ほど、チャフが多く、除去の効果も大きいと感じています。
精製方法の影響(副次的な要因)
| 精製方法 | チャフとの関係 |
| ウォッシュド(水洗式) | シルバースキンが果肉と一緒に洗い流されやすく、焙煎前の段階でやや少ない |
| ナチュラル(乾式) | シルバースキンが残りやすく、焙煎後もチャフが多くなる傾向 |
| ハニー・アナエロビック等 | 中間〜やや多め |
ただし、精製方法の差はあくまで焙煎度の差に比べれば副次的です。同じナチュラルでも深煎りにすればチャフはほぼ焼失しますし、ウォッシュドの浅煎りでも一定量のチャフは残ります。
参考:エスメラルダゲイシャでの比較

ぽるがエスメラルダゲイシャのウォッシュドとナチュラルを飲み比べた際、ウォッシュドはチャフがすごかったのに対し、ナチュラルはチャフがウォッシュドより少なかったのです。
一般的には「ナチュラルの方がシルバースキンが残りやすい」とされており、また、焙煎度も同じ「ミディアム系」でナチュラルの方がやや浅煎りですので、逆の結果となりました。教科書通りに「ナチュラルの方がチャフが多い」とならない場合もあるというのは実際に比べてみて初めて気づきました。焙煎度と精製方法のバランス、豆や焙煎所でチャフの残り方は異なるのだと思います。

【実体験】ゲイシャの渋みが消えたきっかけはチャフと水だった
ここからは、私がチャフの影響を実感した体験をお伝えします。
ゲイシャで渋みを感じていた経緯
ゲイシャコーヒーといえば、フローラルな香りと明るい酸味が魅力の高級品種です。しかし自宅で淹れると渋みが気になることが多くありました。
決定的だったのは、ゲイシャで有名なサザコーヒー勝田本店(茨城県ひたちなか市)で「パナマ・ゲイシャ エスメラルダ農園 マリオ(赤箱)」(¥3,500)を飲んだ体験です。エスメラルダ農園のマリオ地区(ゲイシャが最初に栽培された区画)のコーヒーで、一口飲んだ瞬間に透明感と甘さに驚きました。
※勝田本店のゲイシャ メニューには「マリオ【品評会】」(¥5,000)・「マリオ(赤箱)」(¥3,500)・「エスメラルダ農園(緑箱)」(¥1,500)の3種類があり、年ごとの品評会ロットや生産時期で内容は変わります。
一方、同じ系統のゲイシャ豆を購入して自宅でドリップすると、雑味と渋みが感じれます。「抽出温度が高すぎるのかな」「湯量のバランスが悪いのかな」と、レシピをいろいろ調整してみましたが、渋みが完全になくなることはありませんでした。
チャフ・水が原因だと気づいたきっかけ
転機となったのは、粕谷哲さんのYouTube動画とUCCアカデミーで講師の方と会話。
Youtubeでチャフの影響を知り、アカデミーで水による影響を意識するようになりました。
チャフについては、粕谷さんの「チャフだけ集めてドリップしてみた」という実験動画を見て、これまでの悩みが一気に氷解しました。実際に浅煎りのゲイシャを挽いた後の粉をよく見てみると、薄い皮のようなものがたくさん混ざっています。「これがチャフで、これが渋みの原因か」と気づいた瞬間でした。
水については別記事で詳しくご紹介しますが、やかんで水道水を沸かすスタイルからブリタの浄水ポット「リクエリ」に変えたところ、塩素臭の違和感が減り、コーヒー本来の香りが前に出るようになりました。

除去前後で味が変わった体験
試しにチャフを除去してからドリップしてみたところ、除去前後で味が明らかに変わりました。それまで気になっていた渋みが軽減され、ゲイシャ本来のクリアで華やかなフレーバーがぐっと前に出てきたのです。
特に浅煎りのゲイシャは繊細な味わいが持ち味ですので、チャフの影響を受けやすいのだと思います。同じようにゲイシャの渋みが気になっている方は、一度チャフの除去を試してみてはいかがでしょうか。
【除去方法】チャフの取り除き方3選

ここからは、家庭でできるチャフの除去方法を3つご紹介します。挽いた直後とドリッパーに粉をセットした後の2つのタイミングで除去すると効果的です。
なお、スーパーや焙煎所で購入できる市販の挽き豆は、工業的な工程でチャフがすでに除去されていることがほとんどです。このため、チャフ除去は、コマンダンテなどのハンドミルや電動ミルで自分で挽いている人向けとなります。
① 息でフッと飛ばす(もっとも手軽/無料)
もっとも手軽な方法です。挽いた粉をドリッパーに入れたり、口の広い容器に入れた状態で、弱い息をそっと吹きかけてチャフだけを飛ばします。
- メリット:道具不要・即実行可能
- デメリット:周囲にチャフが散らかりやすい、力加減によっては粉まで飛ぶ、衛生面が気になることがある
私自身、個人でコーヒーを楽しむときは面倒なのでこの方法で飛ばしています。
② ブロアー(エアダスター)で吹き飛ばす【おすすめ】
ミルの手入れにも使うシリコン製のエアブロワーで風を当て、軽いチャフだけを飛ばす方法です。息で吹くよりも衛生的で、ピンポイントに風を当てられるので粉が飛び散りにくいのが利点です。
注意点としては、ブロワーは風圧が強く、チャフをふわっと飛ばすのはコツがいる点です(強すぎても弱すぎてもダメ)。コツとしては、ドリッパーに粉を入れた状態で斜め上から短く数回プッシュするのがおすすめです。粉は重いので下に残り、軽いチャフだけが舞い上がって外に出ていきます。
ブロアーはコーヒーミルの清掃にも使えるので、ひとつ持っておくと何かと便利です。ミルのバリ(刃)に残った粉を吹き飛ばすのにも重宝します。
③ チャフ・微粉を分離する専用器具
より本格的にチャフと微粉を分離したい方向けに専用器具も市販されています。
私は未所持ですが、チャフ除去機能を持ったコーヒーミル(KIRIMAI 株式会社TREE FIELDなど)、焙煎用ふるい(KRUVEなど)を使い、挽いた後の粉からチャフを分離できます。
除去量の目安
私が普段チャフを除去する感覚ですと、20gの豆で約0.2gのチャフを除去できます(約1%)。
重さにするとわずかですが、味への効果は想像以上です。
豆を挽く際は抽出に使う量+約1%を目安に多めに挽いておくと、チャフ除去で減った分を相殺できてちょうど良い分量になります(例:20gで淹れるなら20.2g挽く)。
【まとめ】ハンドドリップの「ひと工夫」でゲイシャが一段クリアになる
コーヒーのチャフ(シルバースキン)は、豆の薄皮が焙煎後に残ったものです。それ自体が強い渋みを持つわけではありませんが、抽出時の雑味や微粉との相性によって、一杯のクリーンさを損なう要因になります。
この記事のポイントを振り返ります。
- チャフ=コーヒー豆の薄皮(シルバースキン)。焙煎後も豆に残る
- 焙煎度や生成方法によってチャフの量が変わる
- 浅煎りのスペシャルティ、特にゲイシャのような繊細な豆ほど除去の価値が高い
- 家庭での除去方法は「①吹く」「②ブロアー」「③専用器具(チャフノン)」の3つ
なお、スーパーや焙煎所で購入できる市販の挽き豆は工業的な工程である程度のチャフを除去済みなので、家庭で挽いいたコーヒー豆よりもチャフが混在することはありません。このため、すぐに使い切れる方はお店で挽かれた状態のコーヒー粉を購入する方法も選択肢になります。
個人的には、ゲイシャをはじめとする浅煎りスペシャルティでは、爽やかな酸味やフルーティーさを際立たせるためのチャフ除去は価値のあるひと工夫だと感じています。
「最近浅煎りを買ったけれど一口目の渋みが気になる」「抽出は合っているはずなのにクリーンさが足りない」という方は、まずはブロアーなどでチャフの除去を試してみてください。一杯の印象が変わるかもしれません。

